ACOUSTICLUB Vol.3 特別企画

作曲家 川島素晴氏が語る、ACOUSTICLUBから見える今後の音楽

ABOUT

ACOUSTICLUB Vol.3開催に向けて、今回のゲストアーティストである作曲家の川島素晴氏にメールインタビューを行いました。川島素晴氏は、現代音楽の作曲家として活躍する一方で、国立音楽大学作曲専修の准教授でもあり、我々Tokyo Media Interactionのメンバーも数名、学生時代にお世話になった先生でもあります。

また、テレビ朝日系列「タモリ倶楽部」の現代音楽特集にて解説者として出演し、最近ではエレクトロニカユニットmacaroomとコラボレーション企画行うなど、ジャンルや業界の壁を超えて活動されています。
Tokyo Media Interaction
は、川島素晴氏のそのような活動が、このACOUSTICLUBという企画の趣旨ととても親和性が高いと判断したため、今回ゲストアーティストとしての出演をお願い致しました。

Profile – 川島素晴

作曲家。東京芸術大学、同大学院修了。1992年秋吉台国際作曲賞、1996年ダルムシュタット・クラーニヒシュタイン音楽賞、1997年芥川作曲賞、2009年中島健蔵音楽賞、2017年一柳慧コンテンポラリー賞等を受賞。いずみシンフォニエッタ大阪プログラムアドバイザー等、現代音楽の企画・解説に数多く携わり、20169月にはテレビ朝日系列「タモリ倶楽部」の現代音楽特集にて解説者として出演。指揮、ピアノ、打楽器、声等、自作や現代音楽作品を中心に様々な演奏活動にも携わっている。日本作曲家協議会理事。国立音楽大学准教授、東京音楽大学、尚美学園大学各講師。

Twitter : https://twitter.com/action_music
Facebook : https://www.facebook.com/kawashimamotoharu

インタビューを行うにあたって

ACOUSTICLUB Vol.3では、川島素晴氏の新作「17名の管打楽器奏者のためのシンフォニア ”アレッタ”」は、プログラムの一番最後に上演されます。

このインタビューは、ACOUSTICLUB初のゲストアーティストである川島素晴氏に、作品について、今後の音楽について、ACOUSTICLUBについてという、3つのトピックを軸にお聞き致しました。
インタビューを行うにあたり、川島素晴氏にACOUSTICLUBのコンセプトと、Vol.3のVol.1Vol.2との相違点を共有致しました。

「ACOUSTICLUB」というプロジェクトは、メディアアートチーム「Tokyo Media Interaction」が主催する大規模な音楽フェスティバルです。創作家やパフォーマーの交流の場として機能すること、各創作家が様々な作品に触れ創作における視野を広げること、そして来場される方々に様々なアートの世界が存在していることを認知して頂くことを大きな目的としています。

以下がVol.1Vol.2との相違点となります。

  1. 出品者の顔ぶれに関してですが、Tokyo Media Interactionに美大出身のメンバーが新たに加わったことに伴い、音楽出身の出品者だけでなく、美術大学の学生など美術系のアプローチをする出品者も多く参加していただいております。それに伴い、作品形態の幅も大幅に広がりました。
  2. 学生がほとんどだった前回、前々回に比べて、今回は、数多くの一線で活動しているアーティストが参加して頂けることになり、イベント全体のクオリティも上昇したのではないかと考えています。
  3. より作品をリラックスして体験していただくために、ロビーにて無料のドリンクサービスを提供致します。
  4. ゲストアーティストという枠を新たに設け、川島素晴氏に参加して頂くことになりました。

インタビュー

出品作品について

  • プログラムノートにも出品作品の説明が詳細に書かれていますが、改めて今回出品していただく作品はどのような作品でしょうか?見どころ、聴きどころを教えてください。

プログラムノート:17名の管打楽器奏者のためのシンフォニア「アレッタ」

今回演奏するのは、東京音楽大学の3年生を中心とするアンサンブル団体である。そのメンバーの多くは、彼らが1年生のときから私が副科和声の授業を担当しており、顔馴染みであったことから、その団体のための新作を書いて欲しいと頼まれていた。本来なら昨年のうちに彼らが主催する学内の企画で初演することになっていたが、企画自体が流れて先行き不透明だった中、今回、私の本務校である国立音楽大学の卒業生が中心に組織した本企画のゲストの話があり、音大の垣根を超える企画主旨にもちょうど適合するし、渡りに舟とばかりにここでのお披露目と相成った。
彼らの自主公演ではないので、主催者指定日時にメンバー全員が揃わなかった。本来男子ばかりの団体だが、今回は何名かのエキストラメンバーが入っており、クラリネットには卒業したてのゲストを紅一点として迎える。その西村明穂さんは、私の難曲《無伴奏 Kla-vier ソナタ》を演奏したことがあるヴィルトゥオーゾで、勢い、当初の予定以上にクラリネットがソリスティックに活躍することとなった。(とはいえ、編成的に高音域が可能な木管は唯一クラリネットのみなので、いずれにせよソリスティックな場面は多くなる予定ではあったが。)
団体名である「アレッタ」を冠したシンフォニアとして構想したこの作品は、翼の意味であることから、鳥がフィーチャーされている。また、この名前の綴りから「A-E-A」を抽出した音列が主要主題となり、且つ「アレッタ」という発音のリズムもこの主題とともにある。私の普段の創作姿勢や着想を、いかにして吹奏楽のスタンダードなイディオムと整合させるか、ということを主軸に、金管楽器主体のこの編成が自由気ままに飛び翔くイメージを展開している。

演奏 : ENSEMBLE ALETTA

まず、クラリネット、サックス2、トランペット5、トロンボーン2、ユーフォ、テューバ2、打楽器4という17名の編成が特殊なので、その時点でとても興味深いものだと思います。吹奏楽のダイナミズムも実行可能でありつつ、室内楽の繊細さも具えたこのフレキシブルな表現媒体をどのように活かすのか・・・。

プログラムノートの段階から少し構想が変わりました。全3楽章構成となっており、プログラムノートに書いた、「アレッタ」という名前の綴りから「A-E-A」を抽出した音列が主要主題となり、且つ「アレッタ」という発音のリズムもこの主題とともにある・・・という内容は、第3楽章についてのコメントとなります。

第1楽章は「あれっ?」という言葉のニュアンスから導かれた2音の音型だけを用いて作曲しました。短2度から長7度までの音程(第3楽章で頻出する完全5度を除く)と、広いほど長くなる音価との関係を示しつつ、構造その他、様々な意味でバリ・ガムランの音楽の影響を受けています。

第2楽章では「Rice Field」、即ち「田んぼ」のサウンドスケープが模されています。プログラムノートにある「アレッタ」という名前が翼の意味であることから鳥がフィーチャーされている・・・という内容は、この楽章に活かされていますが、ここでのイメージは、日本の田園風景よりは、ウブドのそれが意識されています。従って、鳥の中でもとりわけアヒルや鶏が主体となり、それ以外の鳥たちに加え、犬、牛、蛙、虫、水流、といったものが聞こえます。背景のハーモニーは「Rice Field」の綴りから「C-E-F-D」を抽出したものです。

以上のように、異なる3つの楽章の全ては「アレッタ」という団体名からのみ導かれた内容となっております。

  • 今回の作品に限らず、普段の創作の中で意識していることはありますか?

私はいつも「演じる音楽」という概念を軸に創作を行っております。通常、作曲とは「音」を構築するものですが、私にとっては「演奏行為」、即ち「音を発するための行為」を構築するものであり、そのためしばしば演奏者の身体性が重視されます。

一方で、そうやって構築される時間構造の前提として常に意識しているのは「笑いの構造」、即ち「人が笑いを引き起こす構造」です。「笑い」は人類のみに許された感情であり、それを引き起こす時間構造を研究することは、例えばハイドンの音楽構造を研究することと同義であり、もっと言えば、あらゆる文化的な時間を研究することとも同義なのです。

 

今の音楽、未来の音楽について

  • 今の音楽の世界はどのようなものだとお考えですか?
  • 今後、音楽の世界はどのように変わっていくと思いますか?
  • 今の若手アーティストにはどのようなものを求めていますか?

まとめてお答えします。

人工知能が一瞬で音楽作品を作り出す世の中となった今、従来の「作曲」技術は人間の手業として求められなくなる時代がすぐそこまで来ています。将棋や囲碁の世界を見るまでもなく、そのような技術は確実に人工知能の方が優秀で着実、且つ場合によっては思いもよらない独創的な仕事をする可能性すらあるでしょう。アルチザン(職人)としての芸術創作は、少なくとも人類の営みとしては過去のものになりつつあります。芸術家にまず求められることは、「これは絶対に人工知能にはできない仕事だ」と思える発想力、独創性であり、それはこれまで以上に困難を極める時代に入りました。

一方で、やはり将棋や囲碁の世界がそうであるように、ヒトは、ヒトを鑑賞することを辞めません。だからむしろ、これからは舞台芸術(パフォーミングアート)の現場で何ができるのか、ということが重視されていくのだと思うし、人間がその場で行うことへの注視、或いはパフォーマンスの一回性といったことは、とりわけ重要になっていくでしょう。端的に言うなら、即興的パフォーマンス能力が、最も鑑賞対象として重要なファクターになってくるわけです。そういった意味での「ヒトとしての手業」は、永遠に鑑賞対象たり得るのです。しかしそれすら、アンドロイドとの勝負を余儀なくされる時代がすぐそこに来ておりますから、既視感のあるテクニックだけでそれを行うのでは勝ち目が無くなっていくことでしょう。

以上を演繹するなら、「人工知能にはできない仕事」と思える発想力、独創性を伴った、「高度な即興的パフォーマンス」だけが生き残る、ということになるのでしょうが、逆に言えば、そのような要素を少しでも具えているものは生き残り得る、ということでもあります。(なお、ここでの「高度」とは、高度な音楽的能力と同義ではなく、極めて高い独創性、といった意味です。)

私自身は、前述の通り「演じる音楽」なるものを細々と実践してまいりましたが、それはあながち間違っていなかったと、むしろ今になって思っています。もちろんこれは、現在時点でマジョリティーをなし得ているとは到底言えないのですが、しかし、何年先になっても今と変わらぬかたちであり続けられるだろうし、たぶんアンドロイドにとって代わられるものでもあり得ないと思います。つまり、この先(それがいかに細々としたものであろうとも)生き残るための最低限の条件を満たしていると言えるわけです。

これからのアーティストには、自分にしかできない表現世界を、ヒト(できれば自分自身)の手業として提示する、そのような仕事が求められるでしょう。定められたカリキュラムといった既定路線を歩くだけではなく、自分自身にしかないアンテナの張り方をしつつ、幅広いスキル、知識、経験値を獲得し、それを自己の表現として収斂させていく、そのようなフレキシビリティ(そしてそれを束ねる集約力)が必要です。

ACOUSTICLUBについて

  • このようなイベントについて、どのように思いますか?

前述の考察からも、多様な表現、価値観に触れるこのような機会は極めて重要です。同人的な団体はとかく閉鎖的になりがちですので、回を重ねるごとに間口を拡げつつあるこのイベントは、これからの時代に求められるかたちとして理想的な方向を歩いていると言えるでしょう。ネットサーフィンするにせよ通販で購入するにせよ、同傾向のものが「あなたにオススメ」といって紐付けられてしまう世の中にあって、様々な所属のアーティストが一堂に会する場は、各人の視野を拡げる好機であり、そのような「普段の現場ではあり得ないような」経験値が各人の次の表現へ収斂するとき、それはまた新しい可能性を導くものと思います。

  • 今後、当イベントの発展に期待することがあれば、お聞かせください。

承前、ある意味で期待通りの発展を遂げているものと思いますから、このまま進めば宜しいのではないかと。

しかしそれだけに、運営面では従来に無い困難を伴うものと拝察します。発展し続けるということは安定性を欠くことと同義なので、課題は常に残り続けるでしょう。そのような課題は実務面もさることながら、内実にも関係します。広汎な多様性は玉石混交と紙一重です。風呂敷の拡げ方と畳み方のバランスを見つつ、インディペンデントというものが無秩序と同義にならないよう、何らかの求心力(及び価値感の共有)をもって進める必要があると思います。

3回目の内容を見ると、既にそのような意識も随所に感じますので、これは杞憂でしょう。

益々の発展を確信致します。

Tokyo Media Interactionから

ACOUSTICLUB Vol.3では、総勢60名を超える創作家、演奏家が集結します。
Tokyo Media Interactionとしては、このイベントをきっかけに様々なクロスオーバーが発生して、音楽に限らずあらゆるアートシーンに少しずつ変化を起こせたらと思っております。
そして、今回新作の制作のみならず、インタビューまでも引き受けてくださった川島素晴氏にこの場を借りて感謝を申し上げます。

ACOUSTICLUB Vol.3開催間近となりました!!
皆様のご来場心よりお待ちしております!!

【ACOUSTICLUB Vol.3】

4月6日(金)
開場 14:00 | 開演 14:30
(終演 20:30予定)

杉並公会堂 小ホール
東京都杉並区上荻1-23-15

ACOUSTICLUB Vol.3
 https://mediainteraction.tokyo/ac3/

Tokyo Media Interaction
https://mediainteraction.tokyo/