PA&Recording - 砂の人々

動きと音のインタラクションによるフィジカル・シアター作品 『砂の人々』

※Tokyo Media Interactionは、「越境する表象」にて「砂の人々」のPA、収録を担当いたしました。

 4人のオフィスワーカーを擾乱に陥れる危機が勃発する。彼らの動きは圧倒的な騒音を発しながら、押しつぶされる危険と、交互におとずれる沈黙の脅迫を示唆している。彼らは生き残ろうとして、最終的に未だ試みたことのない新たな方法で、厳格なオフィス環境の空間的要素と単調な動作を用いて、彼らの行動や相互作用そして生活に新たな意味を与える身体動力学にいたる。

 この作品では、元来、スタイルが異なりながらも表現的なものであるダンスや動きというものを、それとは相反する制約的環境下に置くことで、ダンサーは予期せぬ不安定な動きをし、そして動力と脆弱性によるある種のゲームが試みられます。それは、機能性や効率性、協働性、または敵対性などが交錯する「オフィス」という場所にもなぞらえられています。そして、オフィスという特有の空間的要素やそこでの単調な行為の連続は、試行錯誤的にダンサーによって新しい展開へと発展していくことで、最終的に彼ら自身の行動や相手との相互関係、または在り方に新たな意味を与える力として変化していくことでしょう。

 また、動きと音との間にはインタラクションが意図されています。それにより、パフォーマーの行為は瞬時に活性化され、音の変容へとつながります。また、彼らの行為から生成された音は、動きの即時性や空間におけるダンサーの存在、そして彼らの関係性をより強調するでしょう。そして一旦体や物体から分離された音は、魂のように漂い、乾いたオフィス環境における個人間の隙間を埋めようとするだけでなく、人々に対して目に見えない指揮力さえもたらし得る存在であり、さらには、ある種の音楽となった音は、時に彼らの脆弱性や危機的状況を救う役割を果たすかもしれません。

 「砂の人々」というタイトルは、砂丘の中に閉じ込められた男の状況を描いた安部公房の小説「砂の女」に関連しています。この作品では、「砂の女」の内容の本質について表現し、最終的に様々な制約的環境下に置かれてもなお、自由を見つけだしていく様子について追求しています。

[出演]
演出:べティナ・ホフマン
サウンド&インタラクティビティ:平山晴花
動き:青木三都子、榑松朝子、Keke、鈴木奈菜(コンテンポラリー)

べティナ・ホフマン(ビジュアル・アート、振付/演出):ベルリン芸術大学で芸術学修士号(MFA)を取得。また、カリフォルニア芸術大学、オランダ国立芸術アカデミーにも在籍した。主な作品発表として、モントリオールのアートギャラリーDarling Foundryでのパフォーマンス、また、写真やビデオ作品はドイツ、オランダ、オーストリア、ルーマニア、韓国、アメリカとカナダにおいてグループ、およびソロ展で展示されている。ビデオ作品は国際フェスティバルやビデオ芸術フェアにおいても出品された。彼女の作品は、シカゴ現代写真美術館、ロサンゼルスカウンティ美術館、モントリオール現代美術館、ケベック美術館、ベルリンギャラリーなど、北米やヨーロッパでの私立または公立機関のコレクションにも含まれている。ベルリン出身、モントリオール在住。http://bettinahoffmann.net/

平山 晴花(サウンド):国立音楽大学音楽デザイン学科、および同大学大学院修士過程を修了(BM, MMus)。英国マンチェスター大学(NOVARS研究所)にてエレクトロアコースティック作曲専修 (PhD)。これまで楽器とエレクトロニクスのための作品を数多く作曲、ブールジュ国際電子音楽コンクール(仏)やSearch for New Musicコンクール(米)での受賞がある。国内外の電子音楽フェスティバルやコンサートでも多くの作品が演奏されている。近年は特にダンスや動きなどを含むシアター音楽作品の研究や創作に関心が高く、国内外のアーティストや研究者とのコラボにも積極的である。新潟県出身、東京都在住。国立音楽大学大学院、玉川大学芸術学部メディア・デザイン学科講師。http://www.harukahirayama.com/

青木 三都子(舞踏家):1987年東京造形大学にて創立岡村唯史氏主催の身体表現・舞踏グループ〝アトリエ・紅〟メンバー。在学中より絵画活動と並行し舞踏の制作発表をする。卒業後は1996年、近年になり2015年、2016年初期メンバーによる公演に出演。また、美術作家としてもアクリル画やコラージュ作品、タティング・レース等の製作発表をしている。  

榑松 朝子(コンテンポラリー):幼少からクラシックバレエを学ぶ。高校大学でコンテンポラリーダンスに出会う。立教大学現代心理学部映像身体学科卒業。これまでマドモアゼルシネマ、カエルPなどの舞台に参加する他、ダンスユニットÀ LA CLAIREにて作品を発表する。神奈川県座高等学校創作ダンス部コーチ。

Keke(コンテンポラリー):ダンサー・俳優。大学在学中に身体表現『ミイム』を和田千恵子氏に師事する。大学卒業後からダンスを始め、伊藤キム主催のダンスカンパニー 『輝く未来』に所属。以降解散までメンバーとして所属した。 その後は伊藤キム振付作品のほかにMOKK、かえるP、尾花藍子作品などに出演している。演劇の分野でも活躍し、PARCOプロデュースや維新派、アマヤドリなどに出演している。

鈴木 奈菜(コンテンポラリー):ダンサー。関東国際高等学校演劇科卒業後、NYへ留学。Steps on Broadway, Jennifer Muller/The Worksから奨学金を得て、様々な振付家と公演。日本に帰国後は国内外でフリーランスとして活動。独自のスタイルを追求している。